
今月、草川為さんの『世界で一番悪い魔女』の最終巻が発売されました。
1巻発売が2015年の夏……4年間、素敵な魔法をかけてもらっていたなあと思います。
『ガートルードのレシピ』1巻が発売され、本屋さんでカーテンのあいだから顔を覗かせている少年の、悪戯っぽい笑みに出逢ったときから、わたしは草川さんの世界が好きです。
『世界で一番悪い魔女』は、ガートルードたちの世界に触れたときの感覚をどこか思い出させる。甘やかなのに、ひんやりした棘もたしかに存在する……そんな感じ。
この先はネタバレパレードの感想なので、まだ読んでないという方は、黙って1巻のKindleでもクリックすればいいと思います。2019年6月14日現在、なんと1巻はKindle版が無料ですって!!
『世界で一番悪い魔女 1巻』(Kindle版)
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同じ空気を吸いながら、違う形の世界に住んでる。
(『世界で一番悪い魔女』3巻 P176)
クインタの、教授に対するモノローグ。
全編通して、テーマの一つだった気がします。今思い返すと。
主人公のクインタが、一応タイトル通り「世界で一番悪い魔女」なんですが、物語後半になってパメラというもう一人の大魔女が現れます。
パメラにとって、同じ形の世界にいたと思っていた相手は、唯一先代クインタだったんだろうな、と。事実はどうあれ。
世界にたった、ふたりきり。同じ大魔女として300年を生きてきた相手が、いち抜けたっていなくなっちゃったんだよね。
パメラはまだまだこの先の世界に夢を見ていた。まだまだ楽しいことがあるって。
クインタとは友だちなんかじゃ決してなかったのだけれど、たったひとり同じ世界を見ていたはずの彼女に置いてかれたパメラのことを考えると、胸がきゅっとなるんです。
どうしてわかってくれなかったの?
って、そんなパメラの呟きが聞こえてくるようで。
そして、教授にとってはジュードが、同じ世界の住人だった。
はじめて「ことば」が通じる相手。同じものを見て、話して、気持ちを交換できる相手。
でも、ひとってやっぱり、同じ世界の人とだけ接して生きていけるわけじゃない。
同じ世界の人となら、言葉を尽くさなくても感覚を共有できるわけで。それはどこか、自分の一部と対話をすることと同じなんだと思う。
だから。
違う形の世界に住んでるひとと、本当にはわかり合えなくっても、それでも話したい、伝えたいと思ったとき、はじめて「自分」という輪郭がはっきりするんじゃないだろうか。
相手が、自分と違う世界の人間だと感じてはじめて、ひとは想いを伝えるための言語を手に入れるんだろう。
クインタが、教授に対してそうしたように。
教授が、クインタに対してそうしたように。
6巻のラスト、とても美しかった。
とても狂おしくて、せつなくて、最高にきれいだった。
パメラとジュード。
違う世界の住人だからこそ、だからこそ、ジュードにはあそこで目を閉じて欲しくなかった。つたなくていいから、傷つけても、拒絶されるかも知れないけど、言葉を尽くして伝えて欲しかった。
目を閉じて、行為を受け容れたあの瞬間。
あの瞬間、パメラは決定的に世界にひとりになったんじゃないか。
だから今度こそ、今代のクインタに同じ「世界に来い」と言うしかなくなったんじゃないかな。
雇い主が魔女を助けに来るなんて聞いたことない。
仲の良いこと。
(『世界で一番悪い魔女』7巻 P160)
クインタを助けに来た教授を見て、パメラがこぼした言葉です。
せつなくないですか?
わたしもう、二度目読み返したときここで目が熱くなったよ。
このときパメラの雇い主であるジュードがどこにいたかっていうと、パメラの魔角類(ホラントラー)の罅(ひびり)のところです。
彼は彼で、パメラのために罅を守ろうとしているわけなんですが、
クインタのそばにいる教授に対して、ひとりきりのパメラという事実は事実なわけで。
ああせつない。
眠り続けるパメラが、もしいつか目を覚ましたら、ジュードは今度は伝えるんでしょう。伝えて欲しい。
違う世界の住人だけど、それでも、と。
素敵な魔法をありがとうございました。
わたしは、無言石(しじまいし)をカンカンさせていたあの魔法使いのおじさんが結構好きです。
滲み出る人のよさ! 苦労人っぽい気配! ふりきれない常識!
あ、写真のマステは、抽選で当たりました!
どこに使おう……。